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RFBDラボ(コラム詳細)
建築×ロボット

2025.11.19

ロボットと建築の未来:人間中心設計からロボット中心設計へのパラダイムシフト

建築設計の新たな視点とロボット共生型設計への転換

コラムサマリー

建築設計の新たな視点として、ロボットの動線や作業効率を考慮した設計手法について考察します。従来の人間中心の設計からロボット共生型設計への転換点を探ります。

はじめに:ロボットと建築が交わる新たなフェーズ

これまでの建築設計は、人間の動線や感覚を中心に空間を構築してきました。
しかし近年、ロボットの社会実装が進むなかで、建築は「人とロボットが共に使う環境」として再定義が求められています。
建物は単なる「箱」ではなく、情報・通信・動線が融合したインフラへと進化しつつあります。

ロボット中心設計とは何か

ロボット中心設計の基本概念

ロボット中心設計(Robot-Centered Design)とは、ロボットが快適かつ安全に行動できる空間を前提に、 人とロボットの共生を実現する新しい建築設計アプローチです。

たとえば:
- 清掃ロボットが段差を検知して最適なルートを選ぶ
- 配送ロボットがエレベーターや自動ドアと連携して移動する
- センサー群がロボットの位置情報を建物全体で共有する

これらを建築段階から意図的に設計へ組み込むことが重要になります。

人間中心設計とのちがい

人間中心設計(Human-Centered Design)が「人の使いやすさ」に焦点を当てているのに対し、
ロボット中心設計では、人とロボット双方が主体となることを前提としています。
つまり、環境全体が「人とロボットの共同生活圏」となるのです。

設計段階でのポイントと課題

ロボット中心設計を実現するには、建築・設備・ICTの連携が欠かせません。
とくに以下の3つの視点が、設計初期から重要になります。

1. 動線と通信の統合設計

建築内の空間的動線と、ロボットが利用する通信ネットワークを一体として考える。
- Wi-Fi死角のない廊下設計
- ロボット同士がすれ違える幅員の確保
- カーブ・交差点部での見通しの良さ

2. 設備とのインターフェース設計

自動ドア・エレベーター・警備システムなど、
ロボットが利用する機器との通信規格・制御タイミングを標準化する。

- APIや通信プロトコルの統一
- センサー・信号機器のメンテナンス性の確保
- 運用後の更新にも耐えられる設計フロー

3. 人との共存安全性

- 人とロボットが安心してすれ違える距離感の設計
- ロボットの存在を照明や音で“見える化”する工夫
- 動作速度や稼働時間帯の制御による心理的安全の確保

実証とこれからの展望

実証実験から見えてきた効果

RFBD(Robot Friendly Building Design)プロジェクトでは、
これらの要素を実環境で検証し、設計ガイドライン化を進めています。

実証実験では、建築段階からロボット導入を前提に設計することで、
- 運用開始後の改修コストを大幅に削減
- 建築・ロボット双方の安全性と運用効率を向上

といった成果が確認されています。

今後の展望

今後は、設計者・施工者・運用者・ロボットメーカーが共通言語を持ち、
“人とロボットの共生環境”をデザインする仕組みの構築が求められます。
建築が「人とロボットの共生基盤」となる未来は、すでに始まっています。

おわりに

ロボット中心設計は、単に機械を便利に動かすための発想ではありません。
それは、社会全体の生活インフラを再構築するデザインアプローチです。

人とロボットが互いに補い合いながら、
安全で持続可能なまちづくりを支えるための建築デザインの進化が、
いままさに始まっています。

パラダイムシフト
ロボット動線
共生型建築
設計手法
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